とある昼休み、理緒に合いに2年の教室に行ってみるとなにやら騒がしい?

嫌な予感に駆られてそっと聞き耳を立ててみると。

「ねえ理緒、聞いたよ? 歳下の子と付き合ってるんだってね」

「うっそ、ホントなの理緒?」

「ちょ、ちょっと誰から聞いたの?」

「噂よ、知らないの? って言うか本当なんだ」

「はう〜〜〜……あ、相手が誰かも知ってるの?」

「ううん、そこまでは……ただけっこうカッコイイってのは聞いたよ」

「いいな〜、でどうなのよ?」

「な、なにが……」

「とぼけちゃって〜その彼氏よ、歳下なんでしょ? もうベタ甘のラブラブ?」

「たしか理緒って一人暮らしでしょ、ひょっとして……同棲?」

「なんでそーなるのよ!」

「あはは、怒らないでよ、これでも祝福してるのよ? 理緒最近明るくなったし」

「そうよねー確かに明るくなったね」

「そお? 前と変わってないと思うけど」

「う〜ん、今だから言っちゃうけど無理してたように見えたのよね」

「あ、あたしも思ってた。なんて言うか演技じゃないけど、一線引いてたように感じたかも」

「うそ、ホントに? 私的には全然なんだけど」

「だから見えただけ、勘違いかもしれないし」

「まあ、理緒がそんな器用な事できるわけないか」

「ううう〜、なにげに酷い〜」





なんとなくそこに居ずらくなった俺は屋上に向かって歩き始めた。

……そうか、あの時やその前の理緒を知っている人間から見たらそう見えるのか。

不意に嬉しい気持ちと寂しい気持ちが同時に起こった、嬉しいのは理緒が自分と出会ってより明るくなった事。

寂しいのは昔の理緒を知らない事……だめだ、ただの独占欲とわがままだな、いくら付き合ってるとはいえ踏み込んではいけない領域がある。

たとえ親だろうが恋人だろうが神だろうがいけない領域が……

もし許されるなら言ってくれるだろう、もしくはなにかしらのアクションがあろだろう。

それまではそっとしておこう、理緒がいつか『聞いて』と言ってくるまで。





放課後、いつもどうり理緒と公園で待ち合わせしてから夕飯の買出しに行く。

「そういえば今日は学校の中で合わなかったね」

「そーいやそうだな、まあそんな時もあるだろ」

本当は合いに行ったんだがそれは伏せておこう。

「今日は何にするの?」

「まだ考え中、インスピレーションがわかないから」

「じゃあリクエスト、麺が食べたい! 冷たい麺」

「ずいぶん大雑把だな、色々ありすぎだろ……せめて和・洋・中のどれかとかに絞ってくれ」

「う〜んとねじゃあ和食かな」

「和か……それなら蕎麦にするか、それに定番で天ぷらでもつけてそれに炊き込みご飯ってところか」

「あいかわらずひとつ決まるとあとが早いね」

「長いからな、主夫暦が」

「ちなみにどれくらい?」

「いままでの人生の半分以上は確実だな」

「それはすごいね……あれ、カゴに蕎麦つゆがないよ?」

「ああ、兄貴が市販のを嫌がるからな、まあ俺もあんまり好きじゃないし」

「って言うことは手作りなの?」

「まあな」

何気なく答えて隣りを見るとなにやらヘコんでる、いったいどうしたんだ?

「理緒、どうした?もしかして好きなつゆがあるのか」

「(私の彼氏様は主夫のスペシャリスト、しかも乙女心には最悪なほど鈍感でなんで落ち込んでるのかわかってない……)」

なにやら考え込んでるようだ、しばらくはその表情を眺めているのも面白いかな?

「(楽しみにしといて言うのもなんだけどたまには彼女の手料理が食べたいとかないのかな……)」

なにやらだんだんと表情が険しくなってきたな、そろそろ止めるか??

「理緒そろそろ会計に行くぞ……聞いてるのか?」

「(……ないんだろうなぁ、これでもけっこう練習してるんだけどなぁ、歩ほどじゃないけど上手くなったはず……)」

どんどんと暗くなってきたな、無理にでもコッチ側にもどすか。

「理緒、愛してるよ」

耳元にボソッと囁いてやると茹でダコも白く見えるほど顔を赤くして(ちなみに俺も赤い)

<|#R|>「あ、う、え? %&#”&’’%&”☆……」<>

だめだ、日本語はおろか地球の言葉ですらない……やりすぎたか。

「とりあえず落ち着け、ほれ深呼吸でもして……」

ん? なにやら怒ってるな、やばいか?

「理緒? 何怒ってるんだ」

<|#R|>「な・ん・で! すでに平然なの!?こっちはすっごく恥ずかしいままなのに」<>

「本当の事だからな、少しは照れくさいが他に聞かれたわけじゃないし」

昔なら絶対言わないであろう、少なくとも理緒と出会う前の俺なら。

「それより早く帰るぞ、バカ兄貴や姉さんがうるさいからな」

会計をしているので後は帰るだけだ、理緒も正気に戻ったみたいだし。

「ああ! 待ってよ〜……」





「ただいま」

「おじゃましま〜す」

「おかえり、二人とも、お買い物デートは楽しかったかい?」

「……おい兄貴、なんつー格好してるんだ」

「あはははは……」

エプロンはいいとしてなぜフリルなんだ……しかも全体に、さらに色がピンクだ……勘弁してくれ。

「はっはっは! いいだろ、うらやましいか?」

「さて、バカはほっといて飯の準備するか、理緒手伝ってくれ」

「う、うん……でもいいの? あのままで」

「ああ、いいんだ。 これ以上下手に相手すると疲れるからな」

俺と理緒はさっさとキッチンに向かう、アレを止めれるのは姉さんぐらいなんだがまだ帰ってきてないようだ。

「おい歩、質問に対してはきちんと答えるのが人として正しい姿だと思うんだが?」

「理緒、野菜洗っといてくれその間に下ごしらえの準備するから」

「は〜〜い、うぅぅ届きにくいぃ〜」

「ほら、台座だ、これで届くだろ」

「うん、ありがと」

「たしか天ぷら用のナベがあったはずだが……あった、理緒それが終わったら次は皮剥いといてくれ」

「わかったぁ」

「おーい、お兄様はシカトか? 泣いちゃうぞ? いいのか? 子供みたいに大泣きするぞ」

「皮むき終わったよ、次は?」

「早いな、じゃあ米洗っといてくれ……洗剤でなんてオチはいらんぞ」

「さすがにそんなバカな事しないよ」

「嘘だ、頼むよ」

「うわ〜〜ん! 誰も相手してくれないよ〜〜〜〜!!! 寂しいよ〜〜〜〜!!!!」

「うるさい! 近所迷惑だから静かにしてろ、でないと兄貴も料理するぞ」

「やっとこっちにも目を向けてくれたか、長く苦しい戦いだった」

「理緒、野菜切り終わったからジャーに入れて炊いといてくれ」

「大変だね、料理とお兄さんの相手の同時進行は」

「まあな、だけどそれもこれで最後だ」

「なんで?」

「姉さんが帰ってきたからな」

振り向くと兄貴の後ろで泣く子も気絶する顔で立っていた。

「や、やあ……おかえり、まどか、あのなこれには……」

<|#R|>グシャ!<> などと不吉な音をたてて兄貴が床に沈む、まさかシャイニングウィザードをかますとは……

「お、おかえり 姉さん、遅かったな」

「ただいま、今回の事件結構長引いちゃってね、も〜くたくたよ」

「今飯の準備してるから先に着替えでもしてきてくれ」

「ついでにお風呂も洗っとくわ」

「たのむ、それとそこのも片付けといてくれ」

「ハイハ〜イ、ほらいくわよ清隆さん?」

「ま、まってくれ、まだ回復して……」

「何か言った?」

表情だけだったらまさしく聖母なのだが後ろのオーラというか気というかソレが黒々しく立ち上っている(汗)

「なんでもありません……」

やっぱり兄貴には姉さんが一番の天敵だな。

「歩? 何か今変な事考えなかった?」

「い、いやなにも。それよりも早く着替えてきたら?」

「ええ、そうするわ。」

姉さんにずるずると引きずられながら兄貴の姿が消えてく、ご愁傷様……チーン!

それからしばらくは……まあそれなりに平穏だった、理緒がちょこちょこと皿を割りそうになったり何も無い所でこけそうになったりなのはご愛嬌と言った所か。

「あ〜ゆ〜く〜〜ん、ビール! ビーール追加〜〜早くね〜〜ん♪」

早々に着替え風呂掃除を終えた姉さんは兄貴を従えて晩酌中だ。

「理緒ちゃ〜ん、こっちに来て一緒に飲まない?」

「姉さん……仮にも警官だろ、未成年に酒を勧めるな。それと兄貴が青紫色の顔だ、そろそろ離してやれよ」

おそらく三十分以上は首をしめられていたであろう、よく死なないものだ。

「げほっ!あ、歩……と、止めるならもっと早くしてくれ、死んだお婆さんに会ってきたぞ」

「なんだ、ついでに連れてってもらえばよかったのに」

「ほほう、敬愛すべきお兄様にそんな事言う口はその口か!」

言いながら俺の頬をグニグニと引っ張りまわしてくる、うざったいったらありゃしない。

「ひゃめほはかはにひ、へひふふぁふぁふははふぁいふぉ(やめろバカ兄貴、飯食わさないぞ)」

「はっはっは、キチンとした日本語でないとわからないぞ?」

キレた、兄貴の手を払いのけて思い切りまくし立てる。

「いいかげんにしろ! このクソバカ兄貴! そんな事する奴は姉さんに売り渡してやる」

「ちょ、ちょっとまて、そこまでの事か? というか人をあてにするのは……」

ギギギッと聞こえてきそうな状態、まさかこんな身近にパロスペシャルの使い手がいるとは……つくづく謎だ。

「<|#R|>ぐはぁ!<> ま、まて、まどか……いやまどかさん、さすがに死んでしまう、は・な・し・てぇぇぇぇぇぇ」

「だめ、可愛い弟に手を出した罰よ♪」

「姉さん、誤解をまねくような表現をしないでくれ、理緒が隣で混乱してる」

何を想像したのか現場を見てたくせに真っ赤になった理緒が<|#R|>『はうぅぅぅぅ』<>なんて言いながらうろたえているし。

「理緒、鳥肌が立つような想像は止めろ、ちゃんと見てただろ」

「だって後ろからだし、下からのアングルだと……」

「とにかく止めてくれ、でないと理緒の天ぷらだけメロンのするぞ?」

「それはおいしいかも……」

何を想像したのか夢見がちだ、俺は気持ち悪くてしょうがないんだが(汗)

「俺が悪かった、だからその想像は止めてくれ、たのむ」

「しょうがないな〜♪ だったら私の海老さん大きいのね♪」

「ああ、わかったから皆そろそろリビングに戻ってくれ、はっきり言って邪魔だ」

ブーブー言ってるが関係ない、『不味い飯食いたいのか?』の一言で退散していった。

小さな子供? は食い物で釣るにかぎるな次回からはこの手でいくか、などと考えてると

「おかしな事考えてると歩にもパロスペシャルだからね」

なんて不穏当な忠告がきた。触らぬ神に祟りなし、石橋は叩いても渡るな、か。

「それよりも後少しで出来るぞ、テーブルの上を片付けといてくれ」

そう言ったとたん空き缶の音がこれでもかと言うほど聞こえてきた、どれだけ飲んだんだ二人とも……

その後は最悪だった、せっかく作った食事は二人の酔っ払いのせいで見るも無残になり(それでもなんとか食べれたが)

理緒を巻き込んでの宴会に突入、酔った姉さんと理緒が唯一素面の俺に無理やりウォッカ(アルコール度68%)をストレートで飲ませて……

そこからの記憶が無い、ただ朝起きると初体験の二日酔いとグチャグチャの部屋、死屍累々の面々、そしてその後片付けが待っていた。










おしまい?





おまけ

「はぅぅぅ、死んじゃうぅぅぅ」 自業自得だ。

「二日酔いには迎え酒よね♪」 酒徒?

「さて、今日も一日遊ぶぞぉ!」 ヲイ

ん? 俺か? 俺は肝臓がしっかりしてるからな、5分で完治だ。(色々と違うと思うぞ?)

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