Case.1
アイズ・ラザフォード
あの月臣学園での事件が起こってから5年が経った。
アイズは、事件後3年間姿を消すことになる。ハンターとの長き戦い、そしてカノンとの一件が覚悟していたこととは言え、精神に大きな負担を強いていたからだ。もちろん、それだけではなかった。プライベートという時間をゆっくり友人たちと過ごすことも、彼にとっては嬉しいことであったし、それだけのことはしてもいいだろうという想いも彼の中にはあったのだ。
事件から4年目の春、アイズが出したアルバムが世界に感動の嵐を巻き起こす。そして、彼は再び世界の檜舞台へとカムバックしたのであった。そのアルバムの名は『cat
ear』という。「何故このタイトルを?」
誰もがアイズに訊いた。
「私の友人には、とても強い女性がいる。友人のために何が出来るか、そのことだけを考えている素晴らしい女性だ。その女性からインスピレーションを受けて、このアルバムが出来たのだ。つまり、このアルバムイコール彼女なのです」
アイズはいつもこう答えた。「それが、今の恋人なのですか?」という質問もあったが、彼は「恋人ではないし、したくもないね」と苦笑いをするのであった。
どちらにせよ、誰もそのタイトルの意味を理解は出来なかった。しかし、アルバムの素晴らしさには変わりなかったので、誰もが賞賛したのであった。タイトルの意味がわかっている者を除いて。
Case.2 カノン・ヒルベルト
「ははは、アイズらしくていいじゃないか」
猫を膝に乗せて、暖炉の前でカノン・ヒルベルトは受話器に向けて笑っていた。彼はアイズ・ラザフォードのインタビュー記事が載っている雑誌を手にしている。東京で桜が咲いていても、道央にあるこの地は、まだ朝晩の冷え込みは厳しい。
カノンはあの事件以来、何を思ったのか北海道での山暮らしをしている。「普通の人間に戻るための訓練さ」と彼は笑うが、ますます野生児になっていく彼を見て「普通」と思う人はいないと思われる。「翼ある銃」から「狩勝峠の仙人」へ。彼はある意味では華麗なる転身をしていた。
しかし、変わらないことは一つあった。彼はやはり猫好きである。
と、チャイムが鳴った。彼の家に来客は珍しい。
「あ〜、ゴメン、誰か来たみたいだ。うんうん、珍しいんだけどね。あ〜、また東京に出たら会ってくれる…………大丈夫だって、山男の格好で行かないからさ。じゃ、また〜」
彼は笑顔のまま受話器を置いた。
「それにしても、誰なんだろうね?」
猫に問いかけながら、彼はドアを開けた。
Case.3 浅月香介/高町亮子
「よう」
「カノン、久しぶりだね」
カノンがドアを開けると、目の前に立っていたのは浅月香介と高町亮子だった。
「わぁ〜、久しぶりだねぇ。どうしてこっちへ?」
久々の友人の来訪に、カノンは満面の笑みになった。
「いや、たまたま北海道に用事があってさ。ついでによろうと思って」
「ついでにしちゃ、かなり遠回りする感じなんだけどな」
亮子の返答に、香介が茶々を入れる。あれからこの兄妹仲が前にも増して強くなった気がする、というと語弊があるな……とカノンは口には出さずに思った。
「あれ、この猫」
と、亮子は猫を抱き上げた。その猫は三毛猫には珍しくメスであった。
「うん、見覚えがあるな」
香介も同意した。
「覚えててくれて嬉しいな、ね、ひよりん?」
カノンは、その三毛猫の愛称を呼んだ。
Case.4 竹内理緒
「はいはい、ではそのように伝えておきますので、では失礼しますぅ〜」
竹内理緒は、アイズ・ラザフォードのマネージャーを勤めていた。アイズは世界を舞台に仕事をするので、なかなか大変ではあるが、アイズをよく知っている者でないと務まらない仕事であるとも言えるので、彼女が適任であると言えた。
「それにしても、『cat ear』売れたなぁ〜」
理緒は、デスクに置いてあるCDを見て呟いた。
「でも、ある意味では、これは私が作ったとも言えるのよねぇ〜。何たって、私があそこでアレを持ってこなければ『cat
ear』というタイトルは生まれなかったんだからねぇ〜」
彼女は事務所でほくそ笑んだ。
Case.5 鳴海歩
「まったく……またあの格好で空港に出てこられたらかなわんっての」
鳴海歩はブツブツ文句を言いながら、受話器を置いた。
あの事件から3年。歩は都内の音大の1年生になっていた。来年にはCDをリリースしようかという話も、アイズ・ラザフォードのCDの製作者サイドからあるのだが、どうせなら別の会社からと彼は思っていた。
「誰からの電話でした?」
ソファでお茶を飲んでいるのは、結崎ひよの。あれから何だかんだで交際が始まり、現在に至っている。
「あ〜、カノン・ヒルベルトだよ。ラザフォードのCDの話でな」
「…………『cat
ear』?」
途端にひよのの顔が般若に変わった。歩が「しまった」と思ったのとほぼ同時である。
「あ、いや、別にあんたにCDの話をしたわけじゃないじゃないか?」
歩は急いで弁明する。と、刹那、クッションが飛んでくる。歩は律儀に顔面でそれを受け、もんどり打って倒れた。
「どっちにせよ、あのCDのことを思い出させたことに変わりないですっ! もう、今日は帰りますねっ!!」
倒れたままの歩に向かって、怒鳴りつけ、ひよのはドアに当たりつつ帰ってしまった。
「そこまですることないじゃないか……」
歩はひとり呟きながら、友人アイズの暴挙を恨んだ。
「何も猫耳の話をここで蒸し返さなくてもいいじゃないか」。……月臣学園のあの事件のクライマックスにおける、猫耳のことは、ふたりの会話ではタブーになっていたのだ。それを蒸し返したアイズは何を考えているのだろう、と最初は思った。しかし、インタビュー記事を読み、CDを聴き、何となく彼の思いは理解できた。確かに自分の彼女はそういった強い存在であると確信している。
しかし、それとこれとは別の話である、歩は思うのであった。
Crazyの蛇足的感想・・つか暴走
くもざる様のSS第一弾Get!
タイトルの『cat ear』、これ見た瞬間にゃんじゃろ? とか思ったんですが読んでなるほど、ですたねw
しかし・・・歩は何処でも苦労するんですねぇ(人の事は言えない)
彼の未来に幸あれ(私が言える事ではないですがw)
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